日時未定

飼い主ミクリオ×ねこにんスレイ

あしぐちはきんとうか中

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詳細
ふ、と。
浮遊物が重石を失って海面に浮き上がるように、視界が開けた。
さきほどまで己の視界を支配していた冷たい重厚な神殿などではない。
窓から昼下がりの温かい日が、照明代わりにびっしりと書かれた書面を
照らし、太陽は真上からちょうどよく移動し、部屋のクッションに身を任せた
自分を程よく温めてくれていた。
ぼんやりと室内を見渡すと、あちらこちらに山積みになった本と、ゴミ袋と
掃除道具。
(ああ、掃除の途中だった…)
ついつい本を読みふけってしまっていたらしい。
片付けを再開しようと思ったところで、漸く己の膝を占領するソレに気づいた。
ぬくぬくと体温を伝えてくる存在は寝息を立てて眠っている。
「スレイ、」
夢でも見ているのか、両耳がぴくぴくと時々動き、口元が意味の不明な言葉をむにゅむにゅと紡いでは、再び安らかな夢に戻っていく。
綺麗な毛並みをしたしっぽは、己の腕に縋るように絡みついていた。
陽の光を受けてつやつやと輝くしっぽは、ミクリオの毎日の手入れの賜だ。
しかしどうしたものか。
(掃除に戻れないな…)
つんつん、と柔らかい頬をつついてやると、ふふふ、とスレイはくすぐったがり、子どもがするようにいやいやをして、ミクリオの膝に余計に顔を押し付けてくる。
しっぽの拘束を解いて、耳の後ろを擦ってやりながら、ふむ、と思案する。
このままいたずらしてやるのも悪くはない。
手入れの行き届いた髪を梳いてやりながら、どうしてやろうかと考えを巡らせた。
(頬に落書き、はこの間やったな)
先週は頬に愛の言葉を書いてやった。
しばらく外に出られないと相当拗ねられはしたものの、悪くなかった。
「あ、そうだ」
ポケットに入った固いものを思い出し、いたずら決行。
くるり、とスレイの身体の向きを返してやると、ふにゅにゅ、とまた何か
意味の分からない言葉の羅列を呟きながら、温かい手がミクリオの片手をぎゅ、と掴んでくる。
(っ、くそ、かわいい…)
カサついた唇に、己の唇を重ね、舌でほんの少しだけ唇を湿らせてやってから、器用にポケットから貰い物を取り出し、キャップを外す。
さすがに中身を出すのは片手では出来ないので、指先で上手くつまみながら
回して、中身を出す。
(たぶん、ミルクがピンクになってから気づくんだろうな)
スレイが起きないように細心の注意を払いながら、はみ出さないようにそっとひく。
「っく、ふふ…かわいい」
小さく呟いて、仕上げに首元に水色のリボンを結ぶ。
「おんなのこ、みたいだよ、スレイ」

そっとスレイの頭をクッションの上に移し、キッチンに向かう。
寝起きのミルクを用意してあげるのだ。
そしてきっと「今日のミルクはピンクだ!」とか言い始めるのだろう、と想像して頬が緩む。

「ロゼたちが帰ってくる前に気づくといいね、スレイ」

その口紅と、僕の色のリボン。



別にコレねこにんじゃなくても…(ボソ)

コレ別にネコにんじゃなくても良かったね


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